高嶋伸欣さんのコメントを代理投稿します。2019年9月18日
1 杉並区教育委員会が、原告(高嶋)の請願文書を「教育委員の紹介が必要」 との、違憲・違法な会議規則を根拠に、請願として取り扱わなかった件についての損害賠償請求裁判の判決が、9月18日(水)午後1:20〜、東京地裁530法廷で言い渡されます。
2 判決の内容の予想は難しいですが、5月29日に審理を強引に打ち切られたことなどから楽観はできません。でも、そのことで一喜一憂はしないつもりです。
3 それというのもこの裁判を始めてみて、改めて「請願権」という基本的人権が日本の社会では、無視され続け、保守革新の関係なくジャーナリスト、官僚、政治家、弁護士、裁判官、法律学者、教科書執筆者、教科書検定官、社会科教師などの大半が「請願権」についてほとんど無関心であるだけでなく、間違った認識でいることにも気づかず、その誤った認識を拡散し続けている状況が、日本国憲法制定以来70年間も構造的に継続されているのだと、気付かされたためです。
4 こうした構造的な歪みの中にはまり込んでいる裁判官が、まともな判決を出せるとは思えないのです。
5 再確認しますが、「請願権」は憲法16条の「何人(なにひと)も」「(すべての官公署の)公務員(に対し)」「平穏に請願をする権利を有し」と明記されているもので、1)「何人も」=①日本国民に限らず、日本在住の外国人もすべてが②年齢(選挙権年齢など)に関係なく、小学生でも2)「公務員(に対し)」=③国と地方自治体のすべての官公署に、請願できるものです。
6 けれども、社会科の教科書(小・中・高)合計数十冊のどれを見ても、この①〜③をきちんと説明しているものは、これまで1冊もありません。それどころか、「日本国民に限る」とか「選挙権年齢に付随しているもの」と思わせる、誤った説明ののものが少なくありません。執筆者も検定官も怠慢の極みに、私には思えます(何しろ何年も前から指摘しているのに改善がほとんどされていないのですから)。公民分野の実際の授業ではどのように説明がされているのでしょうか。
7 法律家の間でも、「請願権」が日本社会でほとんど無視され、歪められている実情について議論がされた形跡がほとんどありません。この数年、教育関係法規の研究会や弁護士団体などでの発表や寄稿などで問題提起を何度かしてきましたが「なしの礫(つぶて)」に終わっています。
8 それに何とも不可解なのが、教育問題や主権者教育に関心をしめしているジャーナリストや市民運動家などが、「小学生からでも請願権を行使できる」ということに触れていない点です。「ブラック校則!」と騒ぎ立てるNGOや新聞記者は「公立学校は官公署の一つである」という認識がないままの憲法認識なのかと、疑問を持ち続けてきました。
9 そして先週9月11日の『朝日新聞』夕刊(東京本社版)のコラム『取材考記』の「低い10代の投票率 政治参加の環境 整っているか」です(添付参照)。ベテランであるはずの編集委員記者、それも『朝日』の記者が、「なぜ小学校の時から請願権行使の体験をさせよう!」という発想を、毛ほども示せないのか。ドイツでは小学生に、社会的要望の発信手順を教え、場合によってはデモもできることを、カリキュラムに組み込んでいると、ネット情報にあります。
10 この『朝日』のコラムを読んだ時の脱力感から数日の今、標記の判決がどのようなものであっても、同レベル以上の「請願権」認識が示されることはないだろとの、受け止めをする心の準備はできています。
11 基本的には法曹の世界も歪んだ「請願権」認識に染められています。判決文がその証拠になる可能性が大です。
12 控訴審では、地裁判決を手掛かりに司法の世界が「請願権」を歪め、蔑ろにしているのではないか、という指摘を裁判官に突きつけたいと思っています。
13 並行して、国会や地方議会への請願には所属議員の紹介を必要と規定している国会法と地方自治法は「請願権」の行使を委縮させ、事実上制約するもので違憲だとする件についての提訴なども考えています。
14 それにしても、弁護士会や憲法学者、教育法規研究者たちなどは、こうした問題に関心はなく、個人の行動に任せるということなのでしょうか。
15 日本の民主主義の形骸化が安倍政権の下でますます顕在化していますが、「請願権」認識の定着が70年の間に進んでいたら、これほどまでにはならなかったのではないかと悔やまれます。遅すぎたとは言え、今後のために取り組みは続けるつもりです。
16 18日の判決の内容などについては、改めて報告をいたします。多くの皆さんに関心を示して頂ければ幸いです。