私たち「杉並の問題を考える会」は、今年の春以降、「西荻窪の道路拡張を考える会」と協力しながら、専門家を招いて都市計画道路問題の学習会を続けてきました。
その結果、大事なことをいくつも学びました。
住民が本気になって反対すれば、いま杉並で予定されている計画道路3路線の工事も止めることができる−−−それが私たちが得た結論です。
これまでも「考える会」のツイッターなどで紹介してきましたが、改めて要約します。
⑴ 時代遅れで利権優先 それが日本の道路行政
①欧米の先進国では約40年も前から、自動車優先の社会を見直し、人間の暮らし優先、環境優先の社会に国の基本方針を切り替えている。
⇨高速道路建設を中止、または地中化したケースや、道路から自動車を締め出した商店街も。その結果、公園や緑地が増えて街は魅力を増し、商店街も人出が増え、売り上げが増加した。そんな実例が欧米各国にはたくさんある。
②それに比べ日本では田中角栄の列島改造ブーム以来、国の道路予算が急増。面積が約25倍もあるアメリカの道路予算に並ぶほどの巨額に。
⇨そこに「うまみ」が生まれ道路族と呼ばれる政治家が出現。お互いの利益をはかるため土木業者を含めた政官民一体の利権構造が出来上がった。以来、日本の狭い国土には過剰な道路予算が、毎年計上されている。税金のムダ遣いは明らかだ。
③この数年、全国の高速道路網はほぼ出来上がった。このため国は新たな予算確保の材料に、70年以上も前に計画され手つかずのままだった都市計画道路に目をつけた。
⇨2019年度の国土交通省の道路建設予算は約1兆8000億円。前年度より約900億円も急増した。欧米のように時代に合わせて道路政策を転換することもなく、既得権益を守るようにひたすら道路を作り続ける。これが日本の道路行政の実態だ。
⑵ 利権がらみ 杉並の道路行政も
①道路予算をめぐる政官民一体の利権構造は、自治体にもそっくりそのまま当てはまり、杉並区も例外ではない。今年度の区の道路予算は約33億8000万円で昨年より3億円も増えている。
⇨この巨費に群がるように、田中良区長の政治資金パーティーや親睦ゴルフコンペには、関係企業の幹部たちが毎回大勢参加する。その資金と票こそが、昨年の区長3選にもつながった。
②今年7月、西荻窪の道路拡張に反対する住民たちが、地元町会の仲介で田中区長に面会できることになった。住民たちは区長が要望に応えてくれるのでは、と期待した。しかし区長は住民たちに向かって「工事は必ずやる」と宣言、「反対してもムダだぞ」と暗に脅しもかけた。
⇨区長は最初から、地域住民の暮らしや街に及ぼす影響など眼中になかったのだろう。自分たちの利権構造を守るのが最優先だからだ。
⑶ 工事は止められる
最後まで「NO」を
①このように都市計画道路は政官民の利権がからむ事業だ。自分たちで過剰な予算を確保し、工事も進めるお手盛り方式。防災上必要、緊急車両通行のためなどの説明理由は、工事を正当化するための大義名分にすぎない。
⇨「防災上必要だから道路を広げる」はウソで間違い。それを証明した実例がある。
阪神大震災のとき神戸市長田区では火災もあって多数の犠牲者が出たが、その中の真野地区だけは奇跡的に被害が少なかった。昔ながらの狭い路地に近所同士のつながりが残り、みんなで助け合い、火も消したからだ。逆に道路を広げれば地域のコミュニティーは破壊される。防災力は落ちるのだ。
「商店街の安全向上のために道路拡幅を」も間違い。道路幅が広がれば商店街は分断され、客足は減り、売り上げも減って街は衰退する。逆に自動車を締め出し、歩行者専用にすれば客が増え、商店街には活気が戻る。
「地域間のアクセスをよくするため」と静かな住宅街に新たに幹線道路を通す計画などは、そもそもの発想が時代錯誤で言語道断。
このように、西荻窪、成田東、高円寺の3地域にとって、都市計画道路は百害あって一利なし。行政側は自分たちの勝手な都合で一方的に工事をするというのだから、住民側も自分たちの大事な暮らしを盾に、堂々と「NO」と主張し、渡り合っていいはずだ。
②私たち住民は、公共工事となると住民より行政の立場が強いと思いがちだが、それは逆。財産権や営業権をもつ地権者や、店を営業している店子のほうが立場は強い。工事に先立って土地収用の手続きをするためには、本来行政側が頭を下げ、協力をお願いしなければならないからだ。
「自分たちのほうが強い。そこに気がつけば住民側が勝てます」
学習会で講演した専門家は、そう断言した。
⇨では、具体的に対象地域の住民はどうすればいいのか。
どんなに行政側に脅されても、用地買収交渉、個別交渉に応じない。書類にも絶対に印鑑を押さないことだという。住民たちの反対が強ければ、強制収用も簡単にはできない。その結果、工事を止めることができるというわけだ。
実際、これまで全国各地で、埋め立て工事やダム、原発、ゴルフ場建設などを、この手法で工事中止に追い込んできたという。
大事なことは「地域の住民たちが反対する自分の立場をしっかり自覚し、みんなでまとまること」と専門家は指摘する。
さあ、あとは私たちの決断次第。
マジで、本気で、道路を止めよう!
みんなで、一緒に、この街守ろう!!
(淳)
(注)日本と欧米の道路行政の違いについては、服部圭郎・龍谷大学教授の講演、公共工事を止める手法については、熊本一規・明治学院大学名誉教授の講演をそれぞれ参考にしながらこの文章を作成しました。