◆報告◆2018年3月18日「考える会」主催講演会 「杉並の税金はどう使われているか?」

2018年3月18日「考える会」主催講演会「杉並の税金はどう使われているか?」

私たち住民にとって、自分たちの納めた税金が地元の杉並区でどう使われているかということは、なかなかわかりにくい問題です。
そこで今回は「税金はどう使われているか?」をテーマに、前杉並区議の奥山たえこさんと、ジャーナリストの三宅勝久さん(「スギナミジャーナル」主宰)に講演していただきました。

参加者のみなさん

日曜日の午後、阿佐ヶ谷地域区民センターの会場には31人が参加し、講演後には質問も相次ぎました。

奥山さんは、ミニミニ学習会「杉並区の財政はどうなっている?」と題して、区の財政の仕組みや歳入の内訳などをざっと説明してくれました。

奥山たえこさん

杉並区の豊かさ(ふところ具合)は、23区内ではほぼ真ん中だそうです。区側は何かといえば「厳しい」「余裕がない」と強調し、保育料の値上げも決めましたが、事実は決してそうではないようです。
奥山さんはもう1つ大事なことを指摘しました。自治体(杉並区)の場合、予算編成権は首長(区長)にあるので、議員は政策への賛否は表明できるが、政策の内容を改めさせる権限はない、というのです。ここが国会とは大きく異なるところです。国会なら与野党間で政策のすり合わせをして、内容を大幅に変更することもできますから。
では、区の政策を変えさせようとすれば、どうすればいいのか。それは「区長を変えるしかありません」と奥山さん。
「なるほど、そういうことなのだ」。私たちも思わずうなずきました。
6月に迫った杉並区長選挙の大切さを、改めて実感した次第です。

続いて登壇した三宅さんは、フリージャーナリストとして活躍するかたわら、市民グループ「すぎなみオンブズ」の一員として、杉並区の情報公開制度を利用して毎年資料を取り寄せながら、区議の政務活動費の使い方を調査してきた人です。
今回は「『税金万引き』は税金泥棒のはじまりーーなにが杉並区政を腐敗させているのか」をテーマに、杉並区による不正な税金の使い方、それを生み出すいまの区政の腐敗ぶりなどを具体的に明らかにしてくれました。
三宅さんが最初に紹介したのは、区議たちによる年間192万円の政務活動費の「でたらめな使い方」です。
自宅の居間を「事務所」と称して毎月多額の「事務所費」を支出していたり、自宅用の電気製品を購入していたり、が当たり前になっていました。
「実態は公私混同もはなはだしい」
「区の税金を盗みとっているのと同じでした。もらえるものは全部使わなければ損だと思っている」
「区の監査委員会も役割を果たさず黙認するだけ。区と区議会がお互いの利益のために馴れ合ってきたのが実態です」
オンブズのメンバーたちが10年以上もかけてこの政務活動費のひどさを地道に調査し、区議1人ひとりの不正を明らかにし、ときには裁判にも訴えてきた結果、区議たちの支出も少しずつ改善されてきました。それでも問題議員については、いまも「不正に支出した政務活動費を区に返還するよう」訴訟を続けているのが現実です。
三宅さんは税金を不当に使った別の事例も紹介しました。病気で欠勤していた区の選挙管理委員(元自民党区議)に、月額24万円の報酬が支払われていた問題です。
三宅さんは「これはおかしい」と2011年に、支払い済みの約半年分140万円の報酬を区に返還するよう求めて東京地裁に提訴しました。ところが区側は、1審で負けたあとも高裁、最高裁まで争い、結局2015年に区側の敗訴が確定しました。
当時、三宅さんはこんな感想を抱いたそうです。
「裁判所が審理を重ねて140万円の支払いは違法と判断したのに、杉並区はなんとこの法律解釈や判断がおかしいと言って最後まで争ったのです」
「区長も区の職員も、まずは法律に従うべきなのに考え方が逆転しています。どう見てもおかしい。信じられません」
「とにかくスキあらば税金の使い方をねじ曲げようとする。こちらが文句を言わなければ、それがまかり通り、当たり前になっていく。そんな恐ろしさも感じました」
「区長や区職員に任せておいたら、これは大変なことになると」

三宅勝久さん

次に三宅さんは高円寺小中一貫校問題を取り上げました。ここでも杉並区政が、都合の悪い事実を隠し、建設業者と癒着し、工期の遅れなどの責任すべてを地域住民になすりつけるとんでもない姿勢を取り続けたからです。
三宅さんによるとこの学校建設についても、資料を取り寄せ調べてみると、当初の設計や土地のボーリング調査、工事を請け負った白石建設の落札率などをめぐって、不審な事実がたくさんありました。それがとくに顕著になったのは昨年2017年の年明け以降です。以下のような信じられない出来事が立て続けに起きました。

(1)2月に白石建設のA部長が、工事現場前で住民との話し合い中に突然自分から転び、「暴行された」と警察に被害届を出した(スッテンコロリン事件=三宅さんの命名)。事件は送検されたが、検察庁は昨年12月「証拠がない」と不起訴に。
(2)その白石建設が4月、今度は現場前に集まった地域住民たちを「工事を妨害するな」と訴えた。このような訴えは、市民の反対運動を抑えることが目的の「スラップ(恫喝)訴訟」だとして、全国的にも注目された。
(3)その訴えの証拠写真には、区主催の住民説明会に出席した住民たちを白石建設が隠し撮りした写真を勝手に使い、1人ひとり個人名まで記載した。区の職員が受付名簿をもとに、白石側に住民の個人名を教えたのではないか、との疑いも。
(4)そして昨年11月、区は突然ホームページで同校の開校を1年延期することを発表した。延期理由はこうだった。「住民の工事妨害のせいで工期を延期したい旨事業者から申し出があった。区は妥当だと判断した」。

 この経過を説明しながら三宅さんは「白石建設が地域住民たちを無理やり法律的におとしいれ、工事妨害を一切させないよう意図していたことは明らかです」「区側がそれをずっと黙認してきたのも明白」と断言しました。
また三宅さんは情報公開資料を分析したうえで、「工期が遅れたのは、最初の設計や土地のボーリング調査がずさんで、都の建築許可が遅れたことなどが最大の原因」
「白石建設や区側が、住民に完成延期の責任をなすりつけようとするのは、完全に問題のすり替えだ」と強調しました。
さらにこの延期発表直前の昨年10月には、田中良区長の政治団体が主催するゴルフコンペに、白石建設のA部長も参加していたことが、つい最近の堀部やすし区議のツイッターで明らかにされました。コンペの参加者名簿もそこに掲載されていたからです。
しかもこのコンペには、平日にもかかわらず、田中区長はもちろん杉並区のU副区長まで参加していました。民間企業への発注で多額な契約を結ぶときに区側の契約担当者となるU副区長と、契約先の企業幹部たちがみんな一緒にゴルフをしていたわけです。
区と区内の契約企業との密接な「持ちつ持たれつ」の関係が、この参加者名簿から実によくわかりました。
三宅さんはこのゴルフコンペにも触れながら、こう指摘しました。
「杉並区政と業者との癒着は明白。腐敗の極みというしかありません」
「田中区長も腐敗しやすく、規範意識が薄い性格であることがよくわかりました」
「ところが本来行政を監視すべき区議会が、その役割をまったく果たせていません」
「この議会の現状が、区政の腐敗を一層深刻にしているのです」と。

では私たちはどうすればいいのでしょうか?
「区長をかえるだけではダメです」
「区政の監視システムを取り戻すことが何より大切」
「そのためにまず区議会を再生させなければなりません」

三宅さんの講演はここで終わりました。

では、区議会を再生させるにはどうすればいいのでしょうか?
それも本当は三宅さんに聞きたかったのですが、質問するのはやめました。
それを本気で考えることこそ、杉並区に住む私たち1人ひとりに与えられた「宿題」だと思ったからです。

(淳)2018.3.22

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