◆ジャーナリスト 三宅勝久トークショー3/18・レジュメ『「税金万引き」は税金泥棒のはじまり なにが杉並区政を腐敗させているのか』

「税金万引き」は税金泥棒のはじまり なにが杉並区政を腐敗させているのか
2018年3月1日 ジャーナリスト 三宅勝久

報酬関連の住民訴訟に見る田中区政の規範意識の希薄さ。

・2009年5月 監査委員「土日2日で15万円」事件発覚
         返還もとめて住民訴訟
         条例改正(月途中で辞職・就任した場合は日割りにする)

・2010年7月 田中良氏区長当選
      9月 勝訴(杉並区敗訴)、控訴せず確定
      10月 選挙管理委員(元自民党区議)が5月から重病で欠勤、月額24万円が払われていたことが発覚。
・2011年5月 病欠中の選管委員報酬140万円の返還を求めて提訴
・2013年10月 140万円支給は違法――と一審判決。区は控訴するが敗訴、さらに上告。
・2014年7月 田中良氏再選
・2015年11月 最高裁が区の上告を棄却。敗訴確定。直後に報酬引き上げ。
・2016年7月 都知事選に増田寛也元総務大臣が自民から立候補、田中区長は応援。
      9月 都知事選に落選した増田氏を区顧問に起用、月2日4時間の「勤務」に35万円を支給。事実上の落選手当て。
・2017年1月 増田顧問への9月分35万円の支給は違法だとして提訴。
・2018年2月 一審原告敗訴、控訴中

高円寺小中一貫校問題 ”工事遅れの責任を住民になすりつけ”工作に区関与か

 区立の中学校1校と小学校2校を1つにまとめ、大規模な6階建ての校舎を80億円以上かけて新築する計画は、その動機から疑問がある。こんご児童が減りつづけるというデータはないが、廃校を強行。

 当初は階建ての校舎を現地で建て替える構想があった疑い(区は認めない)。最初のボーリング調査にそのむね記載がある。だが一転「6階建て・屋上プール」になる。こんどは「子どもは増える」といいだした。基本設計者は(株)教育施設研究所。このあたりの経緯はまったく不透明。
  
 実施設計を受注した教育施設研究所は、追加ボーリングもあわせて受注・実施する。設計者自身がボーリングをすること自体が不自然。発注者側の仕様書にボーリングの仕様がいっさい記載されていない。数合わせ、形だけのボーリング。
  
 その調書に改ざんが発覚。高層とすべきところを「中低層」と書き、文科省指針をもとに基礎杭の基準をあまく評価した。区は「誤り」と説明したが無理がある。教育施設研究所は、指針を作成した当の文科省技官が役員をしている。
 
 2016年12月の入札で高円寺に本社を置く白石建設を中心とする企業体が落札率99・3%で落札、受注・契約した。都の建築許可が17月に出ることを前提に、同月に着工、2年後に工事を終えて2019年4月に開校する旨の工程表を作成する。

 ところがこのとき区は、都から杭の強度を含めて多数の疑問を指摘され、3月末までに修正できないと申請を受理しない旨の通告を受けていた。契約時点ですでに1月着工が難しかった可能性がある。以後修正作業を繰り返し、許可が出たのは予定より3ヶ月も遅い2017年18日だった。

 建築許可が出るまでの間、現場の中学校では、ときおり測量など軽作業のために工事業者が来たが、住民有志は紙製のプラカードを持って「区は住民と話し合え」などと肉声で訴えた。激しい衝突はなく区職員が来ることもなかった。
 
 2017年2月に奇妙な事件が発生する。路上で住民と話し合っていた白石建設の幹部社員が、突如自分から転倒(目撃者の話)、「暴行を受けた」と警察官を呼んだ。後に嫌疑なしで不起訴となる。

 続いて5月にも事件がおきる。白石建設JVが住民らに対して、妨害禁止の仮処分申請を出した。工事説明会で業者が盗撮した写真が証拠に使われた。区は盗撮を問題にしなかった。

 東京高裁は、車の前に立ちはだるなど10日間の穏やかな行為を「妨害」と認定。

 5月から工事開始、半年後の11月、区は突如として20194月の開校は無理だとして1年延期を発表する。次の理由を公表した。

〈住民の妨害のせいで工事が遅れたので工期を延期したい旨事業者から申し出があった。区は妥当だと判断した〉

 なお延期発表直前の10月26日に青木部長は田中区長のゴルフコンペに参加している。
 
 建築許可が出る前の、裁判所の事実認定では10日間の「妨害」でなぜ4ヶ月の遅れが出るのか。区の説明はこうだ。

〈建築許可前でもプールの解体工事はできる。妨害で解体工事ができず工程が次々に遅れた〉

 この説明も説得力がない。プール解体工事の届出は建築許可の後に行うよう区が指示した事実が文書で裏づけられた。

 だが区はなお「住民の妨害」説を繰り返す。工事の遅れの責任を住民になすりつけ、業者をかばっている。癒着は明白。腐敗のきわみというほかないが、本来行政を監視すべき議会がその役をしていない。田中氏は腐敗しやすく規範意識が薄い性格であることがわかった。だが、彼の資質もさることながら、議会が機能不全となって行政を監視できなくなっていることが、区政の腐敗を深刻にしている。