区議会陳情審査報告「高円寺小中一貫校特別支援学級中学生教室の中学生フロアへの設置を求めることに関する陳情」2018.9.21

標記陳情は、2018.9.21 杉並区議会文教委員会にて審査され、否決されました。
提出者の孝本敏子(こうもととしこ)さんによるその報告を寄せていただきました(文末にpdf添付)。

たくさんの人が傍聴に来てくれました。委員会での討議は、重要答弁(物理的には可能)あり、障害について深い発言あり、「格子戸問題」が初めて浮上したりと、不採択にはなりましたが、区議会でこのような討議がなされたことは、意義深いと思いました。(孝本敏子)

皆さま
21日には、突然のお知らせにもかかわらず、たくさんの方が文教委員会の陳情審査に来てくださり、ありがとうございました。補足説明をしましたが、心強い限りでした。
結果は否決という残念な結果でしたが、「障害のある子もない子も、子どもは同世代の子どもの中で育つことが大事」ということをめぐって議会で1時間余り議論がなされたことは、大きな意味のあることと思いました。
陳情に賛成の立場から、上保議員、木村議員、そね議員から貴重な発言がありました。また、障害のある子どもとない子どもが一緒にいることが差別をなくす、という話が議会でなされたことが印象に残りました。
答弁は公的発言として注目すべきものがたくさんある、と思いました。

区の答弁で、高円寺小中一貫校は軽度知的障害の子どもが対象とのこと。答弁から浮かび上がった区の姿勢は、子どもたちへの想像力、思いやりが感じられず、小学生の中で過ごす中学3年間に、改めて心が痛みました。
 「交流・共同学習があるから2階の特別支援中学生は4階の通常学級中学生から切り離されてはいない」と区は答弁しましたが、その実態は「年に一度の募金活動」「体力アップタイム」「生徒会の朝の清掃活動」、「知的障害なので中3の数学はむずかしい(済美教育研究所長)」(この発言は文科省の「交流共同学習ガイド」に沿わない発言です。このガイドでは、特別支援の生徒は、特別支援の教員がその子なりの目標を設定して共同学習に臨むことになっています。また、通常学級にも知的な障害を持っている生徒はいますし、私もそのような生徒を担任しました。数学の授業にも出席していました。その生徒たちにいてはいけない、といっているようなもので、教育行政責任者として問題発言です。)。
 更に、特別支援学級と通常学級の境に格子戸を設置、「時に応じて閉めることもある。格子戸なので顔は見える」と区は答弁。「格子戸なので顔は見える」って、一体何ですか?!格子戸で遮断することもある、という教育が「共生社会形成にむけた教育」でしょうか?!
 「建物のユニバーサルデザインガイドライン(東京都)」についても答弁は「建物は誰もが使用している。動線はいろいろな所に行く(?)。ガイドラインに逸脱していない」という訳のわからないもの。ガイドラインには「同じ動線で利用できる経路(特別な経路を設定していない)」とあり、逸脱は明白です。
 また、区は上保議員、木村議員の質問に「特別支援学級中学生教室を4階におくことは、物理的には可能」と答えました。物理的には可能なのにあえて中学生フロアに置かなかった理由は、「小中の子どもたちの関わり、教職員の情報交換・・・」。特別支援中学生は中学生同士より小学生とかかわりを強めればいいのでしょうか?同じ言葉を通常学級中学生に言いますか、「中学生が小学生と一緒に調理をしたり、いろんなことを学び自己肯定感も・・」(済美教育研究所長の答弁)ということを通常学級中学生に言うでしょうか。特別支援学級の子どもに対する抜きがたい差別感を感じます。
 「物理的には可能」ということは、今後に使える言葉です。

裁決は、陳情に賛成〜上保議員(共産)、木村議員 (維新)、そね議員(いのち平和)
    反対の意見表明〜富本議員(自民)、横山議員(公明)、山本議員(立民)
    意見表明なく賛成せず=反対〜岩田議員(自・無)
*文教委員は9名。他に、委員長北議員(公明)、大熊議員(自民)

文教委員会の後、何人もの方が感想や報告をメールに載せてくれました。
みんなの会ML、杉並PEWSブログ、すぎなみオンブズブログ、です。わたしの報告の足りないところが書かれています。ご覧ください。

陳情は否決されましたが、このことが今後、この問題の論議を封じるものではありません。
3年前、小中一貫校計画撤回の陳情は否決されましたが、その後議会の内外で小中一貫校問題は熾烈に論議されましたから。
今回のことを力に、今後も「中学生は中学生フロアに、同世代の中に」を追及していきます。傍聴、ありがとうございました。                
孝本敏子